2021年5月、Bz 稲葉浩志さんとMr.Children桜井和寿さんの夢のような対談がYouTubeで実現。
稲葉浩志氏、桜井和寿氏と言えば泣く子も黙る(!?)日本代表を代表するBIGバンド『Bz』と『Mr.Children』のボーカリスト。そんなお二人が対面で「歌うことについて」、「作詞について」、「バンドについて」、「私生活について」、約1時間13分もの長時間、対談します。
地上波だったら絶対実現しない、だからこそ地上波では語られない稲葉浩志氏と桜井和寿氏のボーカリストとしての苦悩や生き方についてトコトン語られています。
本記事は私がお二人のファンであるがゆえに、『en-zine Vocalist 対談 稲葉浩志×桜井和寿』の内容についてお二人の魅力を文字で起こしてみました。
YouTubeではサラッと流れていく内容でも、文字に起こすと見えてくるお二人の魅力がきっとあるはず!
ご興味ある方は最後までご拝読頂けると幸いです。
動画はコチラから。
冒頭
稲葉氏:「今回は歌うことについて誰かと話しをしてみたいなと思いこの方に来て頂きました。Mr.Childrenの桜井和寿さんです。ようこそいらっしゃいました。」
桜井氏:「嬉しいです!お呼び頂いて。」
桜井氏、深々とお辞儀
稲葉氏:「ちょうど思いついたときに、来てくれるかなぁ….と思ったりして。実際にお話ししたことがあるのは、Mステ(音楽番組;ミュージックステーション)のバックステージのときとか、1回コンサート観させて頂いたときにご挨拶程度くらいですね。」
これまで話す機会がなかった二人
桜井氏:「二つ返事で来ましたっ!もう是非っという感じで。」
稲葉氏:「今日は二人の最大共通項である“歌う”ということについて語りたいと思っています。」
桜井氏:「なんか、トーナメント戦の違うサイドにいる二人のような感じですね・・・・(笑)」
稲葉氏:「そうですね(笑)」
最初に桜井氏が切り出します。
ツアーについて
桜井氏:「一度稲葉さんから“Mr.Children、ホール回られたことあります”って聞かれたことがあって。」
稲葉氏:「たしかMステの年末のスーパーライブのとき。僕ら(Bz)はよく離島とかも回っていて、離島に行くと幟(のぼり)とか作ってくれていたり、町ぐるみで迎えてくれたりして。コンサートが終わるとフェリーで見送られて、(町の人たちは)寂しくなってしまうのかなぁ…とか思ったときがあって。」
稲葉氏はそんな寂しそうなイメージの離島に、Mr.Childrenに行ってほしいと思ったホールの話を桜井氏にしたようです。
稲葉氏から受け取ったメッセージで、桜井氏はメンバーにその話をしてすぐにホールツアーを実行したことを笑顔で語ります。
稲葉氏に言われるまではホールツアーをやったことがなかったMr.Children。ホールツアーがやれなかった1つの理由として、桜井氏は病(小脳梗塞)になったことや、シビアな経費面をあげました。
桜井氏:「ホールツアーはやってみて辛かったです(苦笑)」
ホールツアーは経費面を抑える必要があり、連泊・連日が当たり前。そこが桜井氏にとって堪えたようです。対して稲葉氏はホールツアーが定着してそんなに苦にならないようです。
稲葉氏:「知らない街にいくのが年齢のせいか楽しくて。出歩くことはないけど。あとこの街にこんな綺麗な会館があるんだとかが嬉しくなる。」
桜井氏:「僕はいい会館があっても、楽しむ余裕があまりないです。“綺麗な会館だな~”と思うことはあるけど、それより“やらなきゃいけないことがある”とか、“今日声出るかな…”とか(苦笑)」
桜井氏、真面目な人だと思った瞬間(再生6分50秒時点)
稲葉氏:「声は、色々試しても朝起きて“えっ!!?”って思うときもある。自分のコンディションを知り尽くして、そのどのパターンにも対応できるように学んでいるつもりでも対処できないことがあったり・・・(苦笑)」
ホールツアーの感想を伺う稲葉氏
桜井氏:「常に“コレ(ホールツアー)を稲葉さんやってんだっ・・・”って思ってスゲーなぁー!って思ってました。結局僕たち(Mr.Children)は2本くらいとばしちゃいましたもん。(笑)」
喉の調子が悪かったと語る桜井氏は続ける。
桜井氏:「喉の調子を良くする薬を飲んだんです。なるべく普段から漢方を飲むようにしていて、でもそのとき飲んだ薬には漢方に見えて水分を全部奪ってしまう成分が入っていて。10曲くらい歌ったところで無理と思って、お客さんに謝って・・・。」
稲葉氏:「演奏はどんどん進んでいくけれど、調子悪いと思うと自分の中だけでそれがどんどん膨れ上がっていく。それが凄く嫌。」
調子悪いことを言う勇気が必要(稲葉氏)
桜井氏:「メンバーに調子が悪いときにそう言ったりしますか?」
稲葉氏:「いいますね。」
驚くと同時に安心する桜井氏。
稲葉氏の告白(喘息)
稲葉氏:「喘息がもともとあって。それを拗らせてしまったときが大変でした。」
稲葉さんが喘息っ!?
だけど人並外れた声量と歌声、そして何時間ものライブをこなす体力をずっと維持している稲葉さんが「喘息」だとしたら、同じ境遇で夢を持ったシンガーにとってとても勇気づけられる言葉だと思いました。ありがとう稲葉さん。
稲葉氏:「その時(喘息が出たとき)は、15分だけ時間もらって簡単なボイストレーニングとか吸入とかをやって、そのときは最後までやり通しました。」
吸入器といえば、桜井氏がMステの控室に持ち込んでした吸入器が凄かったと稲葉氏。
桜井氏の告白(吸入器)
稲葉氏:「Mステのとき、(口元まで繋がっている)ダクトみたいなスゴイ吸入器を桜井さんがしているのを見かけて・・・。」
桜井氏:「手に持つ乾電池式の吸入器はよくあって。でも、それだと出る蒸気が細かくなくて声帯まで届かないんですよ(笑)」
シンガーあるある話なのか、稲葉さん大爆笑。
桜井氏:「(蒸気が細かい)スチームの吸入器って電池駆動ではなかなかなくて、ミニサイズのバッテリーをスタッフさんに購入してもらい、そこにコンセント繋いで。」
さらに吸入器について熱く語る桜井氏。
桜井氏:「吸入器って口と鼻を同時に覆うスタイルのものが多い。なので、メイクしていると口の周りのメイクが落ちてしまう。だから(吸入器を)口元にしかこないダクト式に自分で改造して作ったんです。」
稲葉氏:「笑。ダクトの部分が気になって“それどこのやつですか?”って聞いたんです。そしたら(桜井氏が)“自分で作りました”っていうから、この人スゲーな!って思って。」
桜井氏:「(当時は口元だけの吸入器はなかった)けど、今出ましたよね(口元だけの吸入器)」
うなづく稲葉氏。
稲葉氏:「吸入器ってそもそも喉のためにあるけれど、ずっとやっていると気持ちもリラックスしてくるからいい。皆さん(シンガーの人)は吸入器やられているとは思いますが。」
桜井氏:「ツアー回るたびに色々な物が増えてしまう。吸入器だったり漢方だったり・・・。でもそれがないと不安になってしまう自分が嫌で、ツアーが終わると一度リセットします。」
稲葉氏:「すごくその気持ち分かります。細かく気を使っている自分にたまに“ロックだろ!!”って言って“いいじゃんそんなのっ!”って思いたい自分がいるけれど。海外のミュージシャンに会って話すとみんな真面目にやってたりします(笑)。」
稲葉さんも自分の呼吸器系に合う漢方を調べまくるみたい。でもツアーが終わってしまうとそこまで気にならないという稲葉氏に桜井氏も同調。
桜井氏の告白(ツアー終了後….)
ツアー中は喉への負担を避けるため「大声で笑わない、風邪を引いちゃいけない、しゃべらない」と気を使うことだらけ。そこで桜井氏が取るツアー終了後のルーティンとは?
桜井氏:「ツアー終了後はわざと声を潰します。」
稲葉氏:「僕は本番終わった後のシャワー浴びているときが一番気持ちよかったりします。」
稲葉氏:「(Mr.Childrenの)バンドのメンバーは気にかけてくれたりしますか?」
桜井氏:「ぼくらのメンバーは声を掛け合うというコミュニケーションはあまりとらない。でも横目で僕のことを気にしてくれている感覚はありますね。」
ボイストレーニングについて
桜井氏:「ボイストレーニングとかはデビュー当時から今までずっとやってきている感じですか?」
稲葉氏:「(トレーナーつけずに)自分でやってます。資料集めたり、CD買ってきてそれを本番前にやったりとか。」
桜井氏:「デビュー当時に(ボイストレーニングは)ちょっとだけやっていて、でも“こんなの何の役に立つんだ”と思ってすぐに止めちゃって。でも5~6年前(2015年くらい)から、喉の調子が悪くなることが多くなってきて。」
桜井氏は続けます。
桜井氏:「歌を上手く歌うということが価値があることのように言われた世の中になってきて、むちゃくちゃ歌が上手い若手の人たちがたくさん出てきた。」
稲葉氏:「(今の若い人は)歌のテクニックに関しても論理的に詳しい。そんなこと僕知らないんですけど・・・・みたいな」
若い世代が歌が上手くなった背景にはきっと世界中の音楽がインターネットによって一瞬にして手に入る環境が大きく影響しているように思えます。どんな場所にいても好きな音楽を、そして知らなかった曲を聴くことができる恵まれた時代に生まれた子供たち。
桜井氏:「(歌が上手い若者をみて)そこでボイトレをやろうと思い今もやってはいますが、なかなか上手くなれないです。」
稲葉氏:「今までの自分の歌い方などが喉に負担をかけていた・・・なんてことを考えたりしますか?」
桜井氏:「振り返ると、歌うということに拘っていないボーカリストだった。逆に歌が上手いシンガーが恥ずかしいと思って始めたバンドがMr.Childrenだった。歌なんか上手く歌わない!と思って歌っていた部分があります。」
歌うことについて桜井氏語ります。
桜井氏:「気持ちが籠っているとき、よしやってやるぞ!ってときは声が出る自分がいる。そう自分のことを考えると、これまで歌を気持ちで歌ってきた部分が大きくて、それはもう技術でカバーできないんじゃないか・・・と。」
頷く稲葉氏。
桜井氏:「僕はもう51歳になりますが、50歳を迎える前に50になっても歌っていたいと思い続けてきた。でもじゃあもし今気持ちが乗ってないで技術でうまく歌いあげられるとしても、これは本当にいい歌なんだろうか…って思ってしまうところがあって未だに一進一退を繰り返している感じです。」
桜井氏の告白(声の変化)
稲葉氏:「(年齢を重ねてきて)声の変化とか感じますか?」
桜井氏:「声の変化・・・。声の変化というか、もし自分がもっと若くて女の子に興味があるような年代だったら多分そういう声を出すことができていたんだと思います。
だけどもはや恋愛にもそんなに興味ない、これから男としてどう進んでいくか、どういうふうに枯れていくか年をとっていくかみたいなことを人生の中で考えているのに、そんなかわいい声は出ないんだろうなっていう・・・
だから、そこに対して口惜しさもあるけれど、もうこれはしょうがないと思っていて。ただ、自分が作ってきた過去の作品と、それを“いい”と言ってくれた皆さんに失礼がないように昔の歌を今も歌っていたいと思っています。」
稲葉氏の告白(声の変化)
桜井氏:「声質はどうですか?変化していると思いますか?」
稲葉氏:「すごく変わりましたね。だいぶ変わりました。ファンの人の中にも気が付いている人もいると思います。
ずっと酷使してきて喉のフィジカルとしてあると思うし、途中で手術をしたこともあるし、倍音が増えたり声が細くなったりとかあります。
だから今昔の曲を聴いたりすると、“なんでこんなふうに(声が)出たのだろう”と良いふうに感じることもあれば、“なんでこんな声を締め付けて…”OKしたのだろう?とか思うこともあります。
桜井氏:「僕も手術しました。」
桜井氏の告白(声帯手術)
先生(医師かどうかは分かりません)に勧められて桜井氏も声帯手術をしたようです。
桜井氏:「スティーブン・タイラー(エアロ・スミスのボーカル)もやった手術があると勧められて、その声帯手術をやりました。」
思わぬ桜井さんの声帯手術の激白。
桜井氏:「硬くなった声帯、肌でいうシミの部分を美容整形みたいにレーザーで焼いていくという手術。」
稲葉氏:「それは声帯に問題があってやる手術なんですか?」
桜井氏:「ちょうど声がおかしいな…と思っていた時期があって。その原因ははっきりしていて。
その当時はちょうど脳梗塞になってしまったときで、血栓を作らないための血が固まらない薬をずっと飲んでいたことが原因。その薬を飲んでいながら歌うから、そのたびに喉がずっと内出血している状態でした。
なので、一旦その薬を止める、そして声帯の硬くなっているところをレーザーで焼くという。
稲葉氏:「ポリープとはまた違うもの?」
桜井氏:「ポリープとは違うものです。」
稲葉氏、興味深々
桜井氏:「レーザーで焼いた部分は柔らかくなってツルっとなるようです。」
稲葉氏:「手術後、実際良かったですか?」
桜井氏:「僕の場合は、過酷なツアーに入るまでいいコンディションに持っていくまでにはかなり時間がかかりました。」
声帯はツルツルになってもそれを使いこなすまでには時間がかかるよう。
稲葉氏:「自分のいいコンディションに持っていくまでどのくらい時間かかりました?」
桜井氏「1年くらいかかりました。」
稲葉氏:「一度横浜アリーナのコンサートを観せてもらいに行ったときの挨拶時、喉の調子が良くないって言われていたけど、実際にコンサートを観ている側はそんなに気になりならなかったことを覚えていて。でも歌う側は気になるんでしょうね。」
桜井氏:「声がものすごいコンディションが良い日にライブをやっても、次の日歌えなくなるんじゃないかっていうぐらいシャウトしたり情熱をぶつけたりするのがロックシンガーだと思っている節があって。
稲葉氏:「2日連日コンサートがあるとすると、僕の場合は2日目の方が声の調子がいい。多分初日よりもリラックスできている部分があるからだと思います。
声の調子が最高に良くても、そのライブ自体が良いかというとそれはまた別。
桜井氏:「声の調子がいいときは、さっきまで何十曲と歌ってきたにもかかわらず、シャワー浴びながら歌ってます。人の曲ですけど(笑)」
稲葉氏(笑)
Q:声が羨ましいシンガーは?
動画としては27分54秒が経過したところで、2人に共通のテーマが与えられます。
最初のテーマは『他のシンガーの方の声で、羨ましく思うことはありますか?』
このテーマで聞き出したい部分、それはおそらく稲葉氏と桜井氏それぞれが声が羨ましいと思うシンガーは誰?といったところでしょう。
何せ負けず嫌いのお二人が羨ましいと思わない声がないはずがないから。
桜井氏:「いっぱいいますよ!稲葉さんもそうですし。若手だったらTaka君(ONE OK LOCK ボーカル)とか、髭男とか…」
稲葉氏:「宇多田さんとかね。」
桜井氏:「歌の技術が高い人もそうですけど、同時に僕の場合は中島みゆきさんとか吉田拓郎さんみたいに、言葉が伝わる歌を歌えるという人も羨ましく思えます。」
稲葉氏:「言葉にたまたまメロディが付いてるような。リズムとか。多分その言葉に一番最適な旋律だったりするんでしょう。」
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発音が苦手な「音」について
ここで稲葉氏が質問。
稲葉氏:「作詞作曲すると思いますが、発音するのが苦手な音ってありますか?」
桜井氏:「『い』音がすごく苦手ですっ!(笑)」
稲葉氏:「僕は『あ段』が苦手(笑)」
キーにもよると思うんですけど、長年やってきて分かったのが『あ段』がうまく伸ばせなかったりしますね….
桜井氏:「ボイストレーナーの方に苦手なところを克服するために色々アドバイスを受けるんですけど、一度聞いてみると面白いと思いますよ。
例えば、高い音が苦手だなぁと思う。そんな時はその高い音に辿り着く前の音で休んでおく、力を抜いておくと声が出やすくなったりするらしいです。
稲葉氏:「苦手なところはついつい力が入ってしまうので、力を抜くっというところがなかなか難しいですよね。」
桜井氏の告白(大沢誉志幸 そして僕は途方に暮れる)
桜井氏:「自分にないスタイルとかを身につけたいと思って研究することってありますか?」
稲葉氏:「僕はあんまり幅広い歌い方ができる方じゃないので、色々な人の歌を聴くとファルセットとかも対応できないし。デモとるときはいろんなスタイルを試したりするんですけど、最終的には自分のスタイルに戻ってしまうことが多いです。」
桜井氏:「僕はお風呂場でよく歌うことが多くて、湿度も保てるから。なのでお風呂場で色々な人の歌い方を研究しています。
最近では、大沢誉志幸(おおさわ よしゆき)さんの歌で『そして僕は途方に暮れる』の“もうすぐ雨のハイウェイ”の“雨の…”の部分が高いAで、でも僕の場合はもう肉弾戦でかすれながら声を出すという研究を今はやってます。
稲葉氏:「よく分かります。もっとAirが入っていてみたいな。僕らの世代だと洋楽のロッドスチュワード(イギリスのロックミュージシャン:ハスキーボイスで有名)。
とても高い音なんだけど軽く歌ってて。そういうのは憧れますよね。やってみたりはするんですけど上手くいかない。
桜井氏:「でもファンからするとそれは望んでいないという・・・」
稲葉氏:「そう!それも確かにあるんですよね。」
歌のことに研究熱心な桜井さん
桜井氏:「5年前とかは歌のことについてこんなに研究するとは思っていなかったです。歌にそんなに比重を置いていなかったから。」
稲葉氏に歌について比重を置いていたかを尋ねる桜井さん。
稲葉氏:「・・・・・・、キツイことが最初から多くて。」
言葉を1つ1つ噛みしめるように、歌うことについて稲葉氏は語ります。
稲葉氏:「基本ハードロックでキーが高かったりするから、最初のころはシャウトしても恥ずかしくない若さがあったけれど、だんだんと声質も変わり、使う言葉も変わってきてしまうと、昔と同じような歌い方では自分を表現しきれない部分が出てきた。それこそ昔はどんなキーだって歌えていたけれど、今はキーのリクエストを結構します。」
桜井氏:「僕の場合は常に歌っていたいし、サッカーも好きなのでそれをやりながらコンディションを整えていく感じです。」
稲葉氏:「ツアー先でもサッカーやったりするんですか?」
桜井氏:「昔はやってました。今考えるとほんとにアホかっていうくらい。アリーナとかだと屋上にある小さなバレーコートをフットサルコートに替えて、何ゲームかやった後にリハーサルして本番みたいな・・・・。」
稲葉氏:「バンドの他のメンバーとかもやるんですか?」
桜井氏:「他のメンバーは……やらないです(笑)」
桜井氏:「何かやられてますか?」
稲葉氏:「僕の場合、割とむちゃくちゃストイックにやっているイメージがあるんですけど、いうほどそんなに何もやってないです。」
歌っていない時間が長くなればなるほど起動までにすごく時間がかかるので、なるべく歌うようにはしてますけど桜井さんほどはそんなに豆に歌っていないかもしれないですね。
あとはストレッチばっかり。なんか怪我をしないようにっていう・・・。
桜井氏,車に撥ねられていたっ!?
桜井氏:「僕は去年(2020年)2回くらい骨、折ってます、足。」
えっ!?骨折してたの桜井さん?
桜井氏:「1回はサッカーで、1回は交通事故で。」
稲葉氏:「交通事故!?」
これにはさすがの稲葉さんもビックリした様子
桜井氏:「アメリカ行ったとき、車線変更って逆なことを忘れていて、日本にいる感覚で渡ってしまって。歩きながら逆の方向を見てて撥ねられました。」
稲葉氏:「撥ねられたんですかっ!!?」
桜井氏:「撥ねられました…. ついてない一年でした去年は。」
アルバムSOUNDTRACKSについて
稲葉氏:「(Mr.Childrenの)ニューアルバムを作られたのはコロナ渦の前だったんですか?」
桜井氏:「ロックダウンする直前にレック(録音)し終えた感じでした。」
桜井氏:「今制作はしてますか?」
稲葉氏:「ちょこちょこ。やってますね。」
桜井氏:「制作しないと….。ミュージシャンってホント何なんだろうって思いますよね。
稲葉氏:「テレビに出て歌うこともできるけれど、本来は皆さんの前で歌うということが一番いい。だけどそれが(コロナで)できないとちょっとね……。存在価値を疑うという気持ち分かります。」
桜井氏:「どなたかが、“職業とは社会に提供する機能のことである”と言ってて。あ、俺この一年何にも社会に提供できていないって思って。」
稲葉氏:「でも結構テレビで歌われている姿を拝見してて。それこそ紅白歌合戦で歌われていた歌なんかは、“機能”としてちゃんと全国に提供されていると思います。」
桜井氏:「嬉しいです、観て頂けて。」
稲葉氏:「それこそ僕なんかは何もやっていないところが。」
桜井氏:「いやそれこそライブ配信なんかやられていて。」
稲葉氏:「今だからできる方法で皆さんやっていると思います。」
桜井氏:「でもお客さんの前で歌いたいですよね、お客さんの声も聞き出したいし。」
稲葉氏:「客さんの声も歌の一部のようなところもあるしね。無観客はそれはそれで縛りがある中で楽しめたりするところもあるんだけど。」
桜井氏:「僕、ウカスカジーという別のユニットでリラックスしながらやっているんですけど、そのツアーで『Ultra Soul(ウルトラソール)』を歌わせてもらったことがあって。」
桜井氏が(Bzの)Ultra Soulを歌う姿観てみたい…..
稲葉氏:「ホントですか?…… 呼んで下さいよ(笑)」
桜井氏(笑)
桜井氏:「(ウルトラソールは)もう無条件に盛り上がりますもんね!イントラが鳴ったとき、それからウルトラソー!のHey!という感じ。また元通りになんないかなぁと思って…..。」
Q:ステージ前のルーティンやモチベーションの上げ方
2人に与えられた2つめのテーマはこれ。
“ステージに立つ前のルーティンや気持ちの上げ方はどうしてますか?”
稲葉氏:「ステージ前のルーティン、何かあります?」
桜井氏:「(ステージに立つ前のルーティンとしては)帯同しているボイストレーナーの方とボイトレをする前に体を動かします。ボールを使ったリフティングとか、ランニングしたりとか。」
稲葉氏:「やっぱりそこはリフティングなんですね~(笑)」
桜井氏(笑)
稲葉氏:「(僕の場合は)ストレッチやって発声練習をやる感じですかね。」
桜井氏:「心拍数を上げたりはしないですか?」
稲葉氏:「え~っと。多少体は動かすんですけど、そこから1曲目に行くまでに(心拍数)下がったりするじゃないですか。なので、1曲目をやりながら(心拍数は)上げていく感じがあります。あまり力を入れない感じで。もちろん発声練習はした後にはなりますが。」
あんだけ発声練習をしたのに、“なんかちがうな~….”というときもありますけど。
稲葉氏:「ツアー中とか外、出られます?」
桜井氏:「最近、仏像をみるのが楽しくなってきて。お寺とかよく行きますね。」
桜井氏、仏像にハマってるみたいです。
稲葉氏:「一人で?」
桜井氏:「そうです。」
稲葉氏:「僕は外にほんと出ないです。昔は朝、外に走りに行ったりしてたんですが、今はほとんど出ないですね。ずっと部屋の中です。」
稲葉氏:「バンドの皆さんとは一緒に食事されたりしますか?」
桜井氏:「調子がいいときとか、その公演が終わった後しばらく間が空くようなときは行きます。そうじゃないときは会場のケータリングで晩御飯食べてホテルで寝るだけみたいな。」
稲葉氏:「僕も全く同じ感じですね。」
桜井氏:「メンバーと食べたりするときも(喉の調子)やっぱり気になっちゃいますか?しゃべり過ぎたなあとか・・・」
稲葉氏「そこまで気にしなくてもそもそもあまりしゃべったりしない(笑)」
桜井氏「なんか気ぃ使われちゃいますよね。」
稲葉氏「そうなんですよ。僕なんかエアコンの設定とかを気にされてしまう。それに気を使っちゃったりする….。そんなこともあって部屋から出ないようになっちゃいましたね。」
Q:ツアー前によく見る夢は?
3つ目のテーマはこれ。
“ツアー前によくみる夢はありますか?”
桜井氏:「僕はつい何日か前にみましたけど、バンドが演奏してくれてそこで歌おうとすると歌詞が全く思い出せなかったりとかっていう夢はよくみますね。」
稲葉氏:「そういう夢みますね、僕も。ツアーのある前によくみます。ステージ上に集まって、すでにお客さんも入っているのに皆で曲の相談をし始めている夢とか。あとステージに履く靴がないとか・・・。」
桜井氏:「靴がない・・・(爆笑)」
稲葉氏:「あと、やりながらお客さんがどんどん帰っていく夢とか。」
桜井氏:「怖いですねそれ。」
稲葉氏:「多分、不安の裏返しなんでしょうけど。でもあまりにも毎回みるんでソレ(夢)をみたらOKみたいなところが逆にあったりします。」
桜井氏:「ほんとですか。」「強いですね。」
稲葉氏「パターン化してきてて。」
桜井氏:「僕はゲネプロ(初日公演前に本番どおりに稽古すること)がすっごい好きで。お客さんはいないけれど、いつも通りの照明の中で、(僕の場合)自分の頭でめっちゃノッてるお客さんを想像できるんですよ。そのときが一番好きかもしれない。」
稲葉氏:「ゲネプロ、(スタッフさんたちが観ている中でするから)割と嫌がる人多くないですか?僕の場合は割と大丈夫なんですが。」
桜井氏:「なので、本番でお客さんいるのに自分の中でイメージしていた歓声の方がでかすぎちゃって。アレ?お客さん全然ノッてないんじゃないかっていう(笑)」
稲葉氏(笑)
稲葉氏:「今は(コロナ渦で)お客さんがいない中やることがあるので、そうなると歓声がないから歓声マシーンを作ったらどうかと言ったりしているんですけど、ゲネプロに使えるかもしれないですね。」
稲葉氏:「ステージのMCは好きですか?」
桜井氏:「好きじゃないです・・・苦笑」
稲葉氏:「そうなんですか?コンサート観たときは好きなんだろうなと・・・(笑)」
桜井氏:「好きですか?」
稲葉氏:「好きじゃないです(笑)できることならしゃべらないで済みたいです。」
桜井氏:「そうですよね(笑)。」
稲葉氏:「でもなんかしゃべることが多くて。それはおそらく自分の中では照れ隠しの裏返しで、ついついその間を埋めるために余計なことをしゃべってしまうところがあります。本当は何もしゃべらずにいたい。(笑)」
桜井氏:「でもそれじゃお客さんつまらないですもんね….。」
桜井氏:「(BZの)松本さんはしゃべられるんですか?」
稲葉氏:「ほとんどしゃべらないですけど、メンバーを紹介したりとかそういうところで話かけて話すみたいな感じ。やっぱり声聞くと皆さんも喜ぶんで。」
稲葉氏:「好きではないにしても、MCって全体のリズムを作るうえで重要ではあるじゃないですか。」
桜井氏:「そうですね、歌がそのMCによってより響いてきたりもしますし。」
稲葉氏:「ライブ自体が良い流れの中で、MCによってさらに盛り上がるときもありますよね。」
桜井氏:「昔は歌のイメージを壊したくなかったです、MCで。なんか曲はすごく完成されていて、その曲を聴きたいと思ってコンサートに足を運んでくれているのに、その曲の前に僕のMCで日常感あふれるくだらない話とかをして、歌をぶち壊したくないなっていう気持ちがあったんですけど…..。最新は少し開き直り気味で(笑)。それでいいのかなあ~っていう。」
稲葉氏:「他のメンバーの方はしゃべらないんですか?」
桜井氏:「全くです(笑)。ドラムのJenくんはしゃべりますけど、他のベースの中川やギターの田原はまあしゃべらないですね。」
桜井氏:「ギター田原なんかは1回、メンバー紹介のときに僕の紹介を田原がするときがあって。で毎回『音楽を誰よりも愛する天才、桜井和寿。』ってそれだけのことをメモに書いてアンプの後ろに置いてあるんですよずっと(笑)」
稲葉氏(笑)
稲葉氏:「その文句はいつも同じなんですか?」
桜井氏:「同じです(笑)」
稲葉氏:「それ、いい話っすね(笑)」
桜井氏:「それくらい話すのが苦手なんだと思います。」
稲葉氏:「僕の場合は基本自分の紹介はないんですよ。」
桜井氏:「ほんとですかっ!?自分で(自分のことを)紹介するんですか?」
稲葉氏:「しないです。なぜかそれが定番になってて。」」
こないだ配信ライブのときにキーボードのプレイヤーの方が(自分のことを)めずらしく紹介してくれたんですけど….。でも基本ないんです。
桜井氏:「寂しいですね。」
稲葉氏:「寂しいと思ったこともなくて(笑)。それでずっときてますからね。」
桜井氏(笑)
桜井氏:「お客さんもだって“なんで稲葉さんだけ紹介しないんだろう?”って思わないんですかね?」
稲葉氏:「思わないんでしょうね。どうして紹介されないんですか?って言われたことないですよね。」とスタッフの方を伺う稲葉氏。
Q:ミュージシャンになっていなかったら?
次のテーマはこれ。
“ミュージシャンになっていなかったら何をしていると思いますか?”
桜井氏:「う~ん….. 僕はもう…..とりあえず何か食っていければいいっていうそんな仕事ですね。他に何か取り柄がなかったから音楽を選んで、一生懸命やってきたというのがあるので・・・・。」
桜井さんにとってミュージシャン以外の仕事につく想像がつかないようです
稲葉氏:「コレしかないな!と思った瞬間とかあります?」
桜井氏:「んと。他のことを僕はほんと何もできなかったので。勉強も何もかも。だから、音楽だけ一生懸命やれたというのはあると思いますけどね。」
稲葉氏:「僕の場合は割とほんとうに普通の学生で。何か問題を起こすわけでもなく、ずば抜けた優等生でもなくて。ふつうに教師の免許を取って、田舎に帰って先生になるって感じでしたね。」
途中で歌を歌うことになって、それを学生と同時進行にやっていたんですけれど。自分としては“コレで食っていくぞ”とか“やっぱ俺コレしかないぞ”と思うこともなくて。
稲葉氏,歌うことになったきっかけ
稲葉氏:「最初同級生に頼まれて。文化祭に出るから誰かバンドのメンバー募集しているからやってよ、って言われたことが始まりなんです。」
その流れでずっときてて、だんだん(歌うこと)ソッチの方が楽しくなって元々やろうとしていた先生の道は辞めてこっちの世界にきてるんですけど。
流に流れて今の歌の世界にいる感じだと語る稲葉氏。
桜井氏:「っていうことは、ミュージシャンでなければ先生に?」
稲葉氏:「可能性としてはそれが一番高いですよね。」
桜井氏:「教科でいうと?」
稲葉氏:「小学校か、中学だと数学ですね。」
数学とってもそんなに数学が好きなわけではないんですが・・・(稲葉氏)
稲葉氏:「桜井さんはバンドのメンバーはそれこそずっと(学生時代から)一緒なんですよね?」
桜井氏:「はい。」
稲葉氏:「それは素晴らしいですよね。皆さん同級生ですか?」
桜井氏:「そうですね、みんな同じ学年で。」
稲葉氏:「それだときっと口に出さなくても分かり合えることっていっぱいありそうな気がしますね。」
桜井氏:「うまくいっているときはそうですけど。音楽のことですら話し合って決めることがちょっと恥ずかしいというか….。
言葉で表現して、例えばバンドの方向性をこんなふうにしていこうよって言葉先行で音楽がついていくのが嘘くさく思えちゃうんですよね。だから、一緒にセッションをやっていて“あ、なんかコイツの表現の仕方変わったな….。”って思ったら、それに反応して一人一人がちょっとずつ反応していくだけでバンドって変わっていくと思うので。
そういう(言葉を使わない)コミュニケーションの取り方をずっと(Mr.Childrenは)やってきてるかもしれないですね。
稲葉氏:「それは個々のパートから感じながらやっていっているという・・・。それって音楽的にすごく自然な感じですよね。」
桜井氏:「バンドで面白いなって思うことで、例えば僕が言ったことを(メンバーが)間違って解釈してくれてて、間違った音を鳴らしているんだけど、関係がいいときは“あっ!その音サイコーじゃん”って思えるけど、関係が良くなかったりすると“おい頼むよ….俺の言ったとおり….”って。それはその時々の4人の心の在りようで変わってくるし、そのバランスも30年バンドやってますけど違いますね。」
稲葉氏:「その時の感情によって音の受け取り方が違うっていうのは、それも生生しくていいですよね。最初に出すべきだったはずの音じゃない方が良かったりするわけで。」
曲のつくり方(歌詞について)
稲葉氏:「ちょっと話は反れてしまうんですが、歌詞の話。犬の散歩とかしているときにイヤホンじゃなくわざと小さめの音量にしてスマートフォンから曲を聴いていると、(歌詞をよく聴き取れなくて)間違った歌詞で解釈てしまっているときがあって。でもその間違って解釈した歌詞の方が面白いと感じることがある。」
桜井氏:「へぇ~。」
稲葉氏:「こんなデタラメな組み合わせで歌ってんこの人、みたいな。」
桜井氏:「自分が歌詞を書くときもそんな感じですか?」
稲葉氏:「自分が歌詞を書くときはもっときちんとした、出どころがハッキリしているというか。言葉遊びみたいにするときは別だとして。」
自分が聞き間違ったことによって生まれる歌詞の方が以外と面白かったりするのかなと思ったりします、このコロナ渦の中でとくに….。
桜井氏:「歌詞つくりは、曲ができた後ですか?」
稲葉氏:「ほぼ曲が先ですね。曲にもよるんですがだいたいそのメロディやコードの流れができたら、そこで書ける歌詞はすぐバーっと書いて。」
桜井氏:「歌詞をすぐ書いちゃうんですね。」
稲葉氏:「そうですね。歌詞ありでアレンジでしていくことも結構ありますね。なので後から歌詞も変わっていくこともありますが。」
桜井氏:「僕の場合は、メロディができてアレンジしてそこにデタラメの英語とかデタラメの日本語で仮歌をつける感じ。その後は稲葉さんが言ったように、自分の耳で聴いてどんな感じで聞き間違えるか….。っていう。そういう歌詞の書き方が多いですね。」
稲葉氏:「ということはデタラメの音に近い歌詞で曲をつくられているという感じですね。」
桜井氏:「そうですね。」
稲葉氏:「それもよく分かります。僕はそれこそ始めた頃なんかは、ちゃんとした英単語を当てはめて歌っていたりしていました。そうすると割と滑らかに歌える。けど、それを日本語にしたときの角が立つような感じが嫌で。」
仮歌のときが滑らかだったのになあ…って思うことが結構あります。
桜井氏:「そうした曲のつくり方をした場合って、この音程でこの言葉(発音)は歌いにくいなっていうのを自然と避けて仮歌を歌っているから、自分の中でわざと聞き間違いした歌詞を本当の歌詞にした方が歌いやすいという。」
稲葉氏:「例えばその曲にストーリーがあるとすると、ストーリー自体はその後に作ったりするんですか?」
桜井氏:「その後ですね。」
稲葉氏「おー。」
桜井氏:「例えば、自分が(聞き間違えた)言葉が『ペットボトル』と『スニーカー』だったとすると、その2つを結ぶ物語をあとから自分で考えるっていう。」
稲葉氏:「なるほどっ。(その歌のつくり方って)ほとんどの曲がそうしてつくられたわけではない?」
桜井氏:「意外と(その曲のつくり方でつくった曲が)多いです。」
そうすると、ものすごく遠くにブイを浮かべると浮かべるほど、深いものが手に入るというか…。
稲葉氏:「あ~、その道のりがあるわけですね。なるほど、それはすごく面白いですね!歌詞を紡いでいく方法としてはスゴく僕に取っては画期的でした。」
稲葉氏も感心する桜井さんの曲のつくり方
稲葉氏:「点と点を結んで繋げていく作業というか。」
桜井氏:「(このつくり方なら)自分でも思ってもいなかった、自分が日頃考えていることやモノに辿り着くことができることが多いですね。」
稲葉氏:「ほぅ…。」
桜井氏:「歌詞を書こうとするとどうしても、この歌詞の中で辻褄が合うことを探してしまったり、流れを考え過ぎちゃうんだけど、やっぱり突飛なモノがあると自分でも思いもしなかったものに出会えるという。」
稲葉氏:「その突飛なモノというのは聴く人によって(突飛だったり突飛じゃなかったり)違うとは思いますが、そういう言葉を僕は少なくともMr.Childrenの曲の中に感じますよ。」
さっき言っていた『ペットボトル』と『スニーカー』という言葉が歌詞の中で出てきたときに、聴く人によって辿り着き方が全然違うわけですものね。それはホント面白いですね!
ミュージシャンとして今一番やりたいこと
最後のテーマはこれ。
“ミュージシャンとして今一番やりたいこと”
稲葉氏:「(Mr.Childrenは)やりたいことはやられていると思いますけどね。」
桜井氏:「僕は僕の中でこの同じ質問を常にしているんですけど。あんまないんスよね。人から求められることに応えたいなっていう気持ちはあるけれど、自分のやりたいことがもはや先行していないというか….。」
でもそう僕が思ってしまうのは、“いや、桜井がやりたいことを聴きたいんだ”って思う人がいる。そんなかみ合わない感じがあるなって思って。でも今のところ、自分を必要としてくれることに対して応えていきたいというその気持ちが今は強いです。
稲葉氏:「今回のアルバム(SOUNDTRACKS)なんかの曲は、もちろん自分の気持ちを曲に仕上げた感じで始まっているんですよね?」
桜井氏の曲への想いとリスナーへの思いが矛盾しているように感じた稲葉氏が投げかけます。
桜井氏:「それが最近は、曲のデモを作ってて“あれ….この曲もしかしたら世の中に出さなくてもいいかも…..。”って思うことが増えてきて…。これはもう歳をとったんですかねぇ(笑)」
稲葉氏:「年齢には関係あると思いますけどね。」
桜井氏:「メラメラした野心とか、俺を表現したい…ということがどんどん薄れてきてはいますね。」
稲葉氏:「ちょっと違うかもしんないですけど、Bzというグループが自分のグループ!って感じがあんまり強くないというか….。最初の頃はもうちょっと強かったのかもしれないですけど、変な話(今はBzって)みんなのものみたいな感覚があります。いろんな人が関わってゼンマイ回しているというか。どんどんそっちの意識の方が強くなってきてて。その中の自分がやっている役割の1つみたいな。
そんな役割をずっとやってきた中で、このコロナ渦の中で自分と向き合う時間というか割と考え事する時間も増えてきてて….。
大袈裟な話ではないんですけど、もっとミュージシャンとして広がりたいなぁみたいな気持ちに。自分が今までそんな意識がなく、いつも手一杯みたいな感じできたので。
この言葉から稲葉氏の『性格』というか『人柄』が伝わります。きっと人と付き合うことは得意な方ではないような感じがしました。(感想)
稲葉氏:「そう考えたとき、この先あとどれくらい歌を歌っていられるか分からないですけど、(歌うこととは別に)まだ違ったことができるかなぁっていう、希望というか楽しみみたいなものを今はもってます。」
桜井氏:「そっか…..。」
稲葉氏:「Mr.Childrenのその“届けなくてもいいかな…”というのはないと思うんで。是非届けてあげてくださいそれは。(笑)」
桜井氏:「分かりました(笑)」
稲葉氏:「届いたときに成立する…みたいなところがあるじゃないですか。」
桜井氏:「そうですね。」
稲葉氏「なので、みなさん大勢待ってらっしゃると思うので。」
ここで時間となり、稲葉氏が最後の挨拶を始めます。(1時間12分43秒 時点)
稲葉氏:「ということで、今回のenjin対談ということでMr.Childrenの桜井和寿さんにお越しいただいて色んなお話を聞かせて頂きました。圧倒間に時間が過ぎて、水を飲むのも忘れてずっと話てしまったんですけど、この話が皆さんに届けばいいなと思っております。」
桜井さん、今日は如何でしたでしょうか?
桜井氏:「もっともっと話たいこととか、誰も聞いてなければもっと色々こんな話したいのになぁ…というのがあるんですが(笑)」
稲葉氏:「じゃあ、続きは別の場所で(笑)。本日のゲストは桜井和寿さんでした!ありがとうございました。」
お辞儀する桜井さん。
稲葉氏:「Yeah!」
まとめ
1時間43分にも及ぶ稲葉浩志さんと桜井和寿さんの対談を文字に全て書き起こしてみました。お二人の対談はまさに地上波TV番組であれば年末年始の『特番』に匹敵する内容の濃いものでした。ボーカリストとしての悩みや作詞(歌詞)を手掛けるそれぞれのマル秘テクニックや苦手な音まで、これまで語られなかったお二人の素顔を垣間見ることができる内容になっています。
本記事は長時間にわたる動画を観る時間がない方のために、対談の内容のすべてを文字に起こしてみました。ぜひお読み頂き、稲葉さんと桜井さんお二人の魅力を感じてもらえると幸いです。
時間があるときは是非YouTube動画の方もご覧ください。